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高松地方裁判所 昭和51年(ワ)176号 判決

原告

大谷瑛

被告

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

(当事者の求めた裁判)

一  原告

「被告は、原告に対し、金五〇〇万円及びこれに対する昭和五一年七月六日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求めた。

二  被告

主文と同旨の判決を求めた。

(原告主張の請求原因)

一1  原告は、原動機付自転車(伊丹市ほ第九九五号、以下原告車という。)を運転し、昭和五〇年四月一三日午前五時三〇分ころ、兵庫県伊丹市梅の木町六丁目二番一〇号先の南北に通ずる四車線道路の左(西)側寄りを北進中、進路右前方道路中央線寄りを同方向に進行していた橋本恵司(以下橋本という。)運転の普通乗用自動車(以下橋本車という。)が進路変更の予告なく道路左側ぎりぎりまで進行して来たので、危険を感じ中央線寄りに待避したところ、再び橋本車が進路変更の予告なく突然中央線に向けて進路を変更してハンドル操作を誤り、スリツプを起し反転して原告車の進路直前で急停車したため、原告車が橋本車の運転席ドアーに衡突して転倒した。その結果、原告は、通院加療八か月以上に及ぶ左肩、右背部、右前腕、左右大腿、左右膝の打撲傷の傷害を被つた。

2  右事故は、橋本が、橋本車を運転するに当り、自動車運転者として、進路を変更する場合には予めこれを予告し、また、運転中みだりに進路を変更してはならず、かつ、常に安全運転をしなければならない注意義務があるのに、これを怠り、二度にわたつて予告なく進路を変更して原告車の進路を妨害し、かつまた、ハンドル操作を誤つて急停車した過失に起因するものである。

二1  原告は、交通事故で前記のとおり受傷したところ、加害者である橋本が原告に対する損害賠償義務を尽さないため生活困窮状態に陥つたので、被告の当時の運輸大臣である木村睦男(以下運輸大臣ともいう。)に対し、昭和五〇年四月二八日発信の書留郵便及びこれに続く七通の葉書をもつて、右の事実を通告するとともに原告の救済を要請した。

2  ところで、運輸大臣は、国家公務員特別職として、憲法及び法令を遵守すべき立場であり、また、運輸、交通行政の最高責任者として、自動車損害賠償保障法(以下自賠法という。)を統轄し、交通事故等の発生及びその処理状況等を熟知し、常に交通事故等に対する対策を検討してこれが現況にあうよう改善し、かつ、これらに対する監督、指揮権を有する立場にある。従つて、運輸大臣は、憲法一三条、二五条、自賠法ないしは国家社会の根幹をなす人倫、人道上当然原告の前記救済要請に対し、有効かつ適切な救済を施す義務がある。

3  しかるに、運輸大臣は、原告の前記救済要請に対し、

(一) 右要請に対応する有効適切な措置を講ずることなく、いたずらに原告を放置した。

(二) 右要請により、原告が交通事故に起因して生活困窮状態にあることなどを知りながら、

(1) 厚生省や警察庁へ連絡するなどの適切な救済措置を講じなかつた。

(2) 原告に対し直接の経済的援助の措置を講じなかつた。

(三) 右要請により、原告が交通事故に起因して生活困窮状態にあることを知りながら、自賠法による保険金、殊に同法一七条の仮渡金制度には、過去の事例から被害者救済の制度として多くの欠点があるのに、普段からその改善検討に意を払わずこれを怠つていたため、原告に対し有効適切な救済措置を講ずることができなかつた。

三  原告は、運輸大臣が前項の救済措置を講じなかつたため、事故発生の日から通じて一か月半余にわたり、弱者として辛酸をなめ、飢え、苦しみ、終には欠食から胃潰瘍を病い、飢餓と相まつて人に非ざる生活を余儀なくされ、その結果被つた原告の精神的肉体的苦痛は言語に絶するものであつた。このように、原告は、憲法で保障された基本的人権のうち、生命権、生活権を著しく侵害された。原告の右精神的肉体的苦痛を慰謝するため、これを金銭的に見積ると、その額は五〇〇万円を下らない。

四  原告が前項記載の人に非ざる生活を余儀なくされたのは、被告の公権力の行使にあたる公務員である運輸大臣木村睦男がその職務を行うについて、故意又は過失により、原告の救済要請に対し、憲法一三条、二五条、七三条一項に違反して何ら有効適切な措置をとることなく、違法に救済措置を怠つた結果発生したものであるから、被告は原告に対し、国家賠償法一条により原告の被つた前記損害を賠償する義務がある。

五  よつて、原告は、被告に対し、金五〇〇万円及びこれに対する本件訴状が被告に送達された日の翌日である昭和五一年七月六日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(請求原因に対する被告の答弁)

一  請求原因一項1のうち、原告が昭和五〇年四月一三日自動車事故により受傷したことは認めるが、その余は知らない。同項2のうち、自動車運転者に原告主張のような安全運転義務のあることは認めるが、その余は知らない。

二  請求原因二項1のうち、木村睦男が被告の運輸大臣であり、運輸大臣が原告から昭和五〇年四月二八日発信の書留郵便及びこれに続く六通の葉書を受領したことは認めるが、その余は知らない。同項2のうち、運輸大臣が国家公務員特別職として憲法及び法令を遵守すべき立場にあることは認めるが、その余は争う。同項3はすべて争う。

三  請求原因三、四、五項はすべて争う。

(被告の主張)

一  原告が運輸大臣宛に差出した書状は、要約すれば、交通事故に起因する生活の窮状を訴え、これが救済を求めたもののようであるが、原告は、運輸大臣がそれにもかかわらず請求原因二項記載の如く適当な措置を講じなかつたことをもつて運輸大臣ひいては被告の不作為による違法と一方的に断定している。

しかしながら、原告が運輸大臣宛になした救済を訴える書状は、何ら法律的根拠を伴わない、いわば政治的とでもいうべき性質のものと考えられる。これに対し運輸大臣としては、たとえそのような要請を受けたからといつて、これに対して直ちに何らかの措置を講ずべき法的義務が生ずるものではない。

そもそも行政庁が不作為による違法を追及されるためには、その前提として法規上の作為義務、つまり特定の個人に対する関係で積極的に作為することが関係法規の解釈上要求されている場合でなければならず、このような作為義務があるにもかかわらずその義務に違反して作為しない場合に初めてその不作為が違法性を帯びてくるのであつて、関係法規上作為義務がないのに個人から何らかの作為を求められることがあつても、行政庁としてはこれに対応する処置を講じなければならないものではない。ましてや、その所管に属しない事項について一片の書状でもつて作為を求められてきても、行政庁としてはその応答の義務さえもないのである。本件はまさにこのような場合であるから、運輸大臣が原告の希望するとおりの処置を講じなかつたとしても、それは、原告に対する関係での作為義務違反としての不法行為となるものではなく、従つてまた、損害の賠償を求められるいわれはない。

なお、原告が問題にしている自賠法による保険金支払いの手続きとか遅延による生活困窮の点については、直接には保険会社、原告ならびに加害者との問題であつて運輸大臣の権限外のことではあるが、ただ、運輸大臣としては、国民から窮状を訴える書状を受けた場合、これを放置するのも道義的に問題があるので、次の二で述べる如く、法的にはその義務はないが特別の処置をとつたに過ぎない。

二  昭和五〇年四月三〇日被告の機関である運輸省は、自動車事故の被害者であると称する原告から運輸大臣宛に生活の窮状を訴える書簡の送付を受けた。その後も五月三日から同月一三日までの間に同内容のはがき六通の送付があつた。運輸大臣は、自動車事故の被害者から生活の窮状の訴えがありその救助を求められても、これに具体的に対処すべき何らの法令上の権限を有しないのであるが、右書簡の内容からみて、原告が極端な生活困窮状態にあることが推察されたので、運輸省においては至急救済処置を講ずる必要があると判断した。しかし、自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」という。)の保険証番号や原告が折衝したという保険会社名が不明であり、また、交通事故の状況、本人の要望が判然としなかつたので、原告と直接面接し、交通事故後の処置、原告の生活状況等を把握するため被告係官を原告宅へ出張させる予定であつたが交通ストのため止むを得ず自賠責保険の査定等を行う自動車保険料率算定会に対し、原告の生活状況等を把握し、自賠責保険受給のための請求手続の教示等必要な措置を講ずるよう口頭で要請した。

この要請に対し、右算定会では、本件交通事故の発生地である伊丹市を管轄する同算定会三宮調査事務所長に対し調査の依頼をした。これを受けた同所長は、昭和五〇年五月八日被害者宅を訪問し自賠責保険請求手続等の相談に応じた。しかし、原告が右保険支払請求書に添付すべき診断書、休業証明書等の書類を完備していなかつたので、同所長は病院、雇主等と折衝し、原告は、同月一〇日同和火災海上保険株式会社に対し自賠法一六条一項の規定による損害のてん補の請求をするに至つたものである。

なお、本件交通事故に対する自賠責保険の支払状況は、別表自賠責保険金支払一覧表のとおりである。

右に述べたごとく運輸大臣は、自動車事故の被害者から生活困窮による救助の要請を受けた場合、これに便宜をはかるべき法令上の規定があるわけではないが、原告の生活の窮状を察し、行政サービスとして前記のごとき措置を取つたものであり、その結果、原告は短期間に自賠責保険の支払を受けることができたのである。

(被告の主張に対する原告の反論)

一  被告の主張一項は争う。すなわち、橋本は、自己の重大な過失により交通事故を発生させた加害者であるのに、原告に二万二、四六〇円の治療費の立替と七、〇〇〇円の見舞金を支払つたのみで、「自分は責任を認めない。今後立替払に応じない。」と大声を出して精神的圧迫を加え、更にその二日後には二人の男を帯道し、その二人に代弁を許し「一切の支払に応じない。俺は気が短かい。」と脅迫し、原告の窮状と苦痛を知りながら、一切の賠償義務と責任を放棄したのである。交通事故加害者には被害者救済の義務と責任が法令上認められており、原告は、その事実を運輸省及び同大臣に訴え、橋本の右義務違反を知らしめたのであり、橋本が法令を犯した事実あるいはその可能を認めながら運輸省は公機関として、運輸大臣は公人として看過したのであり、明らかに義務違反を犯している。作為義務による不作為である。何故なら運輸省及び同大臣は何らの対策も講じていないからである。自賠法は、昭和三〇年法律九七号として成立以来約二〇年を経過しており、その矛盾はほぼ周知の筈であるし、時代に対応すべきも、またその運営の的確を期すべき努力も運輸省及び同大臣は当然の義務として日々なすべきである。加害者橋本の如き事例も多々ある、またあつたと原告は推察するが、同法に対し責任を負う運輸省及び同大臣が周知しないとするならこれは非常なる怠慢であり、作為義務の不作為が成立する。いずれにしても、運輸省及び同大臣は国民の権利を擁護すべき責務を有するからである。更に、運輸省及び同大臣は、国家及び社会正義に基づく、そして法令上定められた交通事故加害者の義務と責任の履行を監視し得ぬのが現状である。これは、法の監視と法の円滑なる運用を計る努力の欠除である。法の監視は裁判所が行うとは言え交通事故のすべてを裁判により解決するのは不可能である。さすれば、法律知識の有無、動物的強弱により不公平に処理されるのは厳然とした事実である。一私人である原告が容易に理解し得る不公正を運輸省及び同大臣そしてこれを専門とする多数の運輸事務官が、理解し対処し得ぬとするなら明らかに行政の遅滞であり怠慢である。公機関、公人として国民の公平、公正を期すのは作為義務であり、すなわち不作為による義務違反である。

なお、被告は、原告の発信した書留郵便を一片の書状というけれども、同郵便は八葉に及ぶ綿密なものであつて、一片の書状として処理されるべきものではなく、原告の生活困窮状況を的確に把握し得るものである。また、被告は、原告の同郵便を法律的根拠を伴わないものと断定しているが、運輸省及び運輸大臣はこれに受理印を押して正式に受理しているのであり、これを受理したからには公機関、公人として国民の生命財産を護る作為義務を有する以上、何らかの有効な手段を行使すべきである。

二  被告の主張二項のうち、原告が別紙記載の保険金を受領したことは認めるが、その余は争う。すなわち、路傍に倒れし人があれば、人皆これを救い、病い篤く看る者がなければ隣人力を合わせてこれを看そして護る。また、飢える人あれば、人々相助ける。この人倫、人道は、たとえ憲法及び法令に定めがなくとも国家社会の根幹として存在するものである。しかるに、被告国は、人倫、人道に基づく行為について、法令上の定めがないとして行政サービス云々というが、これは国民の存在を忘却した国民不在の行政であり、憲法一三条、二五条の精神に反するものである。

(証拠関係)〔略〕

理由

一  請求原因一項1のうち原告が昭和五〇年四月一三日自動車事故により受傷したこと及び同項2のうち自動車運転者に原告主張のような安全運転義務があることは当事者間に争いがない。そして、右の事実に、原本の存在及びその成立に争いのない甲第一号証、成立に争いのない甲第二号証、原告本人尋問の結果に弁論の全趣旨を総合すると、請求原因一項1、2の各事実が認められ、右認定に反する証拠はない。

二  木村睦男が被告の運輸大臣であり、国家公務員特別職として憲法及び法令を遵守すべき立場にあること及び運輸大臣が原告から昭和五〇年四月二八日発信の書留郵便とこれに続く六通の葉書を受領したことはいずれも当事者間に争いがない。そして、原本の存在及びその成立に争いのない甲第八号証の一、二(右書留郵便)、同第九号証ないし第一四号証の各一、二(右六通の葉書)によれば、原告が運輸大臣宛に発信した書留郵便及び六通の葉書には、原告が前記交通事故で受傷し、これに起因して生活困窮状態にあるから救出(救済)を願う趣旨の記載のあることが認められる。

原告は、運輸大臣の不作為による違法を主張し、国家賠償法一条により損害の賠償を求めているところ、同条にいう「職務を行うについて」の中に、作為のほか、不作為も含まれることはいうまでもないが、運輸大臣の不作為による違法を追及するためには、被告も主張するとおり、まず、その前提として法令上運輸大臣に作為義務の存することが必要であり、このことは法律による行政の原則から当然のことである。

1  原告は、前記救済要請に対し、運輸大臣がこれに対応する有効適切なる措置を講じなかつた旨主張する(請求原因二項3(一))。そして、原告本人尋問の結果によれば、右にいう有効適切な措置とは、要するに自賠法による自賠責保険金の給付を意味することが明らかである。

原告は、前記作為義務の根拠として、自賠法をかかげているが、自賠法の規定のうち、運輸大臣の管掌する事項は、政府の自動車損害賠償責任再保険事業、自動車損害賠償責任共済保険事業及び自動車損害賠償保障事業の各業務であり、運輸大臣が右事項についての職権の行使にあたつては被害者の保護に欠けることがないように努めなければならない(自賠法八三条、八六条)けれども、本件加害車両である橋本車は、同和火災海上保険株式会社との間で自賠責保険すなわち自動車損害賠償責任保険契約を締結しており、しかも本件は保有者不明等の事案ではないのであるから(甲第一号証、原告本人尋問の結果)、この自賠責保険による保険金の給付は運輸大臣の前記各業務にあたらないし、右保険金の給付は前記保険会社と原告及び加害者橋本との関係の問題であつて、運輸大臣の権限外の事項である。従つて、自賠法を作為業務の根拠とする原告の右主張は採用できない。

次に、原告は、前記作為業務の根拠として、憲法一三条、二五条をかかげているが、憲法一三条は個人の尊重と公共の福祉との関係を規定し、同法二五条は国民の生存権と社会的使命を規定したものであつて、右各規定から直ちに運輸大臣に原告主張のような具体的作為義務が生ずるものとは到底解せられない。従つて、この点の主張も理由がない。

更に、原告は、前記作為義務の根拠として、人倫、人道上の義務をかかげているが、人倫、人道上の義務と法令上の義務とは同一のものではなく、このことは法律による行政の原則上当然のことであるから、人倫、人道上の義務を根拠として運輸大臣に原告主張のような作為義務があるとはいえない(のみならず、仮に、人倫、人道上の義務に著しく違反するときには、公序良俗違反による法律上の作為義務違反があるとの見解に立つとしても、原告本人尋問の結果により真正に成立したと認める甲第五号証、同本人尋問の結果に弁論の全趣旨を総合すると、運輸大臣は、前記救済要請を受けるや、自賠責保険の査定等を行う自動車保険料率算定会に対し、原告の生活状況等の把握と自賠責保険金受給のための手続の教示等を依頼し、これを受けた同会三宮調査事務所長において昭和五〇年五月八日原告方に赴き、原告の生活状況等を調査し、かつ、前記保険会社に対する自賠責保険金の受給手続をとらせていること及び原告は右三宮調査事務所長の行動が前記救済要請に対応するものであることを知つていたことが認められるのであるから、人倫、人道上の点からも運輸大臣に作為義務違反はないというべきである。)。従つて、右の主張もまた理由がない。

2  原告は、前記救済要請により、運輸大臣は原告が交通事故に起因して生活困窮状態にあることを知りながら、(一)厚生省や警察庁へ連絡するなどの適切な措置を講じなかつた、(二)原告に対し直接の経済的援助の措置を講じなかつた旨主張する(請求原因二項3(二))。しかしながら、関係法令を検討してみても、運輸大臣に原告主張のような作為義務の存在することを認めるに足る規定は見当らないし、原告が作為義務の根拠としてかかげる憲法一三条、二五条、自賠法及び人倫、人道上の義務についても前記1で説示したのと同様の理由で作為義務の根拠とはならない。従つて、右主張も理由がない。

3  原告は、運輸大臣が原告に対し有効適切な措置をとることが出来なかつたのは、自賠法による保険金の給付制度、殊に仮渡金制度に多くの欠陥があるのに、その改善検討を怠つたためである旨主張する(請求原因二項3(三))。なるほど、運輸大臣が自賠法施行令(昭和三〇年一〇月一八日政令二八六号)及びこれに関連する政令等の立法に関与することは明らかであるけれども、右保険金(仮渡金も含む。)の受給手続等は裁量の余地のあるものであり、原告本人尋問において、原告が自賠法に欠陥がある指摘する点を十分考慮してみても、運輸大臣に原告主張のような改善検討を怠つた事実があるものとは認め難い。従つて、右主張もこれまた理由がない。

なお、原告が被告の主張に対する反論として主張する作為義務のうち、さきに判断した部分を除くその余の部分は、いずれもその主張自体に徴し前記救済要請に対する運輸大臣の不作為とは結びつかないものであることが明らかであるから採用できない。

三  以上のとおりであつて、原告の請求はその余の点について判断するまでもなく理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 山口茂一)

原告大谷瑛自賠責保険金支払一覧表

〈省略〉

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